• 黒島「豊年祭」

  • 波照間島「ムシャーマ」

  • 竹富島「結願祭」

  • 西表島 祖納「節祭」

  • 竹富島「種子取祭」

    島々の伝統行事を紹介しています。島々の祭事が執り行われる拝所(御嶽)には勝手に入ることはご遠慮ください。

    神と自然と人の信頼関係を重んじる島の祭事を知ることで、島を敬う行動へつながればと思い、この頁をまとめました。

    豊作の感謝と翌年の五穀豊穣・無病息災を祈願する

    豊年祭

    農作物の収穫に感謝する祭事。地域によって日程が異なり、作物の収穫が終わった時期に執り行われる。

    地域:
    竹富島、小浜島、西表島(祖納、干立、古見、船浮)、黒島、鳩間島、新城島、波照間島
    時期:
    旧暦6月
    写真 取材地:
    黒島
    • 祭りの準備が進む

    • アサクイ(朝漕い) 豊年祭の幕開け

    • 杯取らし(さしきとらし) ウーニーの2人が長老から訓示を受け杯を受ける

    • パーレークイ(爬竜船競争) 杯を受けた後、船に向かって疾走するパーレークイのスタート

    • パーレークイの熱い戦いを島民皆で見守る

    • 豊年ジラバ 皆で円になり歌い、翌年の五穀豊穣を願う

    • ミーラク行列 青い空と海に映える美しいミーラク神

    • 黒島子ども会による笠おどりコームッサ

    • ボー(棒術) 威勢のよいかけ声と共に躍動感のある演舞が披露される

    • カサブドゥン(笠踊り)

    • ユー揚げ 皆で力を合わせ船を陸へ揚げる

    • 黒島の伝統を紡ぐ若きウーニー

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    黒島の豊年祭(プーリー)は、海岸を会場とするところに特徴がある。海の彼方の理想郷「ニライカナイ」からもたらされる豊穣(ユー)に感謝と願いを届ける。アサクイ(朝漕い)で幕開けすると、豊年祭の華ともいえる集落対抗のパーレークイ(爬竜船競争)と続く。黒島のパーレーは船の速さだけで勝敗が決まらず、船漕ぎした後、ウーニーと呼ばれる成年が砂浜を走り、先に長老のところに到着した方が勝利となる。競漕を終えると集落皆で円になり「豊年ジラバ」を歌い巻き踊りをし互いを讃え、より一層の豊穣を願う。

    豊穣の神ミーラク神(弥勒神)を先頭にしたミーラク行列やカサブドゥン(傘踊り)、ガッキブドゥン(鎌踊り)、ボー(棒術)など次々と奉納芸能が執り行われる。そして最後は漕ぎ手皆で力を合わせ船を陸へ揚げるユー揚げで締めくくられる。船を皆で引き上げる様はニライカナイからの恵みを拝受し喜びに満ちたそんな姿として映る。自然と神と人のつながりを肌で感じるそんな祭事だ。

    波照間島の旧盆行事で、豊年豊漁祈願・先祖供養を行う

    ムシャーマ

    旧盆の中日(旧暦7月14日)に島を挙げて盛大に執り行われるミチサネ(行列)と舞台での奉納芸能が行われる。

    地域:
    波照間島
    時期:
    旧暦7月14日
    写真 取材地:
    波照間島
    • 笑顔はじける馬舞者(ンマメシャー)

    • 東、前、西組の3つに分かれ行列(ミチサネ)は公民館を目指す

    • 多種多様な芸能で行列を組んで進む

    • ミルク神を婦人が囲んで島の繁栄を願って唄う

    • 笛の音が会場を包む

    • 笛に合わせてテーク(太鼓)を叩く青年と子供たち

    • 念仏踊(ニンブチャー)

    • 棒(棒術)とテーク(太鼓の舞)のあと一息つく青年達

    • 棒(棒術)とテーク(太鼓の舞)が行なわれ、午後の部の準備を行う

    • 午後の部で行われる一番コンギ(狂言)

    • 公民館の中庭に設置された舞台では様々な芸能が行われる

    • 舞台芸能を終え行列は朝来た道を戻っていく

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    5つの集落が東組、前組、西組に分かれ、公民館の銅鑼が打ち鳴らされると「ミルク神」を先頭とした行列(ミチサネ)がスタートする。行列はマミドーマ(女性が農作業の様子を表現した踊り)、イニシリ(精米作業を表す稲摺り)、豊漁を意味する魚釣りなど、多様な踊りや表現で行列が構成されて集落を練り歩き公民館を目指す。公民館前の庭ではボー(棒芸)とテーク(太鼓)の演舞が順に行われ、午前の部最後には祖先供養のニンブチャー(念仏踊り)が盛大に繰り広げられる。
    午後は、公民館広場に設けられた舞台で舞踊や狂言などが演じられる。最後は、再びミチサネの行列が来た道を戻り祭事の幕を降ろす。

    行列は目にも楽しく美しく、見るものを釘付けにする。脈々と受け継ぐ様々な芸能、演舞、武術、獅子舞を通じて現代に生きる島の人と、先人を繋ぐ行列にも思える。

    1年間の願いが成就したことを神々に感謝する

    結願祭

    五穀豊穣、子孫繁栄、無病息災など、一年の諸祈願を解き、神々に感謝する祭事。狂言や踊りが奉納される。

    地域:
    竹富島、小浜島、黒島、西表島(古見)、鳩間島、新城島ほか
    時期:
    旧暦8月〜9月
    写真 取材地:
    竹富島
    • 1日目に行われるユングマイ(夜籠り) 神司は夜を徹して神に願う

    • 夜が明け神司は島内の御獄を一つ一つ回り願いを唱える

    • 祭りの運営を担う執行部 島民の代表として神さまの前で願う

    • 神司がニガイフチを唱える御嶽の横で供物の準備が進む

    • 毎夜踊りの稽古が行われる

    • 着付けや化粧も島民同士が施し合う

    • シバンキョンギン(始番狂言) 島のこどもたちは幼い頃から大人達の歌や踊りを見て育つ

    • ンープリキョンギン(芋堀狂言)

    • 大浦越路節(うふぁらくいつぃぶすぃ​​) 四ツ竹を打ち鳴らし優雅に息ぴったりに舞う

    • 奉納芸能は舞台上の演者と幕裏の地謡(じかた)(音を奏でる人々)とでつくられる

    • 赤馬節(あかんまぶし​​)の衣装を身にまとう親子 親から子へ芸能が受け継がれていく

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    竹富島の結願祭(キチガン)は、旧暦8月最初の壬(みずのえ)と癸(みずのと)の2日間に渡って行われる。 1日目はカンツカサ(神司)が一晩御嶽の神と過ごすユングマイ(夜籠り)。そして夜が明け2日目になるとユングマイを終えたカンツカサたちは島内にある23箇所の御獄を参拝し「ニガイフチ(願い口)」を唱える。祭事の最後はマイヌオン(清明御獄)で執り行われる奉納芸能。地謡(じかた)の伴奏に合わせ集落ごとに奉納される舞踊や、島伝統の狂言演目「シバンキョンギン(始番狂言)」「ンープリキョンギン(芋堀狂言)」がテードゥンムニ(竹富島の方言)で演じられる。

    繁栄を願った先人の思いは祭事を通じこれからも受け継がれていく。

    豊作の感謝と、農暦における新しい年の五穀豊穣、健康と繁栄を祈願する

    節祭

    西表島祖内の節祭は3日間にわたって執り行われ、2日目は舟漕ぎ競争や、様々な種類の芸能が繰り広げられ、神々へ豊年祈願が行われる。

    地域:
    西表島(祖内、干立、船浮)、波照間島、竹富島、黒島
    時期:
    旧暦8月〜9月
    写真 取材地:
    西表島 祖納
    • 旗頭起こし(カシラウクシ)薄暗い明け方から始まり、日の出と共に4旗が揃う

    • 着付けを互いに協力しあう青年たち

    • 厳かな雰囲気の中で行われるミリク起こし

    • 前泊の浜へミリク行列は進む

    • 黒布で頭を覆ったフダチミを先頭にアンガー行列も前泊海岸浜に到着

    • 節アンガーの婦人たち

    • 船元の御座に着座したミリク行列

    • 船元の御座での奉納舞踊

    • 「まるま盆山節」演者の女性達の頭に載っているのは白鷺(シラサギ)

    • まるま盆山をまわる勇壮なフニクイ(船漕ぎ)の競争

    • 浜では婦人たちがドラや太鼓に合わせて手を振り上げて応援する(ガーリ)

    • 船漕ぎ競争は「海の彼方から豊年を漕ぎ寄せる」と言い伝えられている

    • ドラや太鼓に合わせ「サーサーサー」の掛け声が海岸に響く

    • フダチミを中心に踊る「婦人アンガー」

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    祖納の節祭(シチ)は、旧暦9月頃の己亥(つちのとい)から3日間にわたって行われ、国の「重要無形民俗文化財」にも指定されている​​。庚子(かのえ ね)を正月とし、農暦における新たな年を迎え島の安寧と繁栄、五穀豊穣、無病息災を願う。
    祭りの約2週間前に役割を決めるトゥリチキを行い、集落総出で祭りに臨む。祭りを行う芸人も裏方もみんなが生活の真ん中にシチを置き祖内集落一帯がシチ一色となる。勇壮なフニクイ(船漕ぎ)の競争や、厳かな婦人アンガー、来訪神を先頭としたミリク行列など奉納される芸能は実に多様だ。前泊海岸に設けられた御座から望む、風光明媚な景色の中で多彩に彩られた衣装や旗頭など、目にも美しい芸が繰り広げられる。

    西表島は今でも稲作が盛んに行われており、稲作儀礼としての息づかいを映し出している。

    種子をまき作物が無事に育つことを祈願する

    種子取祭

    竹富島の種子取祭は9日間かけて執り行われ、踊りと狂言をメインに50もの奉納芸能が行われる。

    地域:
    竹富島
    時期:
    旧暦9月〜10月
    写真 取材地:
    竹富島
    • 世持御嶽にて神司による祈願が行われる

    • カンタイの儀式

    • 参詣 (サンケイ) 神司ならびに公民館執行部、石垣・沖縄・東京郷友会役員が主事宅を訪問する

    • 竹富小中学校生徒と教職員による太鼓

    • しきた盆

    • 根原家に参拝・祈願拝礼 その後各集落にわかれてのユークイがはじまる

    • 早朝に奉納されるシドゥリヤニ

    • 西集落の主事宅前の庭でガーリを舞う執行部や踊り子たち

    • ジッチュ

    • 仲筋ホンジャー

    • 弥勒節の歌と共に子孫(ファーマー)をつれて弥勒神が登場

    • シーザ踊り(シーザブドゥイ)

    • タノリャー

    • 種子蒔き(タニマイ)(狂言)

    • 種子取祭が無事に執り行われたことに感謝する

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    竹富島の種子取祭(タナドゥイ)は、旧暦9月〜10月に9日間かけて行われる。農耕に関連する儀式が行われ、種子を蒔き、それが無事に育つことを祈願する。現在、竹富島では農業は行われていないが、今もなお祭事として受け継がれており、国の「重要無形民俗文化財」にも指定されている。
    祭りの期間は、準備や奉納芸能の練習を合わせると約10日間にもわたる。庚寅(かのえとら)と辛卯(かのとう)の7日目と8日目には、ユームチオン(世持御嶽)で約50以上の芸能が奉納され、7日目夜から朝にかけてはユークイ(世乞い)の儀式が行われる。ユークイはまず世持御嶽でイバン(九年母の葉)をいただく儀式を行い、これに参列してイバンをいただいた人は、ユークイ人として翌朝その葉を返すまでユークイに参加しなければならない。イバンを白い布(ティサージ)に包んで鉢巻にして頭に巻くことでユークイ人としての証となる。ユークイ人は豊穣を願う歌を歌い、太鼓や銅鑼を打ち鳴らしながら各集落の家々を訪れる。

    長い歴史を通じて伝承されてきた種子取祭。島民が一致団結して執り行う一連の儀礼には竹富島で大切にされている「うつぐみ」(協力一致)の姿が映し出される。共同体の強さと伝統の重要性を今に伝えるそんな祭事だ。

    その土地ならではの文化に触れる。それは旅の醍醐味です。だけど「祭事」は神聖な行事。敬う心を忘れないで。そして、静かに見守る行動をお願いします。