私たちの島時間レポ  黒島

風土と経験が良い牛を育む
黒島の畜産業の若き担い手

黒島の宮良当志郎さんにお話を伺いました。

黒島生まれ黒島育ちの宮良当志郎さん。祖父・父とつないできた畜産業のバトンを引き継ぎ、24歳という若さでさくら牧場を取り仕切っています。

小さい頃から見ていたから。畜産業についたのは自然な流れ

畜産業につくことになったきっかけを教えてください

黒島生まれの黒島育ちですが、ずっと野球をやっていたので野球部のある学校へ通うために中学から島を出ました。その後、八重山商工高等学校(甲子園出場経験のある野球の名門校)で野球を続けて、大学も野球で岐阜の大学へ進みました。でも、この先ずっと野球で生きていくのは難しいかなと考えて、20歳の時に黒島へ戻ってきたんです。

うちは祖父の代から牛の繁殖農家をやっています。僕も小さい頃からそれをずっとみて育ってきたので、いずれは家業を継ぐものだと思っていました。でも、戻ってきてすぐにこの牧場を任せてもらえたわけではなく、最初は給料ももらえなかった。3年たってやっと父が「やってみろ」っていってくれて、今は完全に任せてもらっている状態です。

妻とは島で出会いました。小学校の先生として転勤で黒島に来ていたんです。だから畜産業は未経験だったのに、しっかりやってくれています。この仕事をしていると休みもないし本当に大変だと思う。家族で力を合わせないと、とてもやっていけませんから頼りにしています。

宮良さん一家が営むさくら牧場。港の前から続く1本道を進むとすぐに見えてくる
牛舎を走り回る姿がたくましい! 娘さんの福羽香(ふうか)ちゃん

生き物と向き合っているから一日たりとも手が抜けない

繁殖農家のお仕事について教えてください

畜産業の朝は早いです。6時くらいから餌箱の掃除をして餌をやり、その後は牛舎の掃除などに取り掛かります。掃除をしている合間にも餌を補充します。餌やりは1日2回。草刈りなども合間にやって、夕方は放牧場に牛を放します。夜は、牛たちは放牧場で過ごすんですよ。

うちは繁殖農家なので、牛を産ませて育て、子牛を競りに出して出荷するまでの行程を担っています。その後は、肥育農家さんが子牛を成牛に育てます。牛は生まれて1年までじゃないと子牛とみなされませんので、10~11ヵ月くらいで競りに出します。競りは奇数月に年6回おこなわれます。年によってバラツキがありますが、うちはだいたい一年で30頭ぐらいを競りに出しています。牛の島ともいわれる黒島ですが、島に牛農家は50近くあり、島民の約8割の人が何らかの形でこの仕事に関わっています。

掃除をしながらもどんどん餌を補充。良質な餌を作ることも仕事のひとつ

経験豊かな父が自分の目標。その背中を追いかけていきたい

良い牛を産ますというのがかなり重要になってくるのですね

そうですね。繁殖はまず種付けから始まるんですけど、血統の良い牛の情報を入手して、種付けすることが重要。良い種はなかなか手に入らないんです。手に入れるのも繁殖農家の手腕のひとつですね。運良く良い種を手に入れることができたとしても、種付けが100%うまくいくという保証はどこにもないので、そこがいちばん難しいところ。僕も数をこなしながら、うちの父くらいたくさんの経験を積んでいかないといけないと思っています。

父は種付けの経験はもちろん、削蹄の技術も高くて、沖縄県内でも3本の指に入るといわれています。爪は牛の第二の心臓っていわれるくらい大事。爪の形ひとつで牛の姿勢が変わってしまうんです。姿勢が変わると、全身への血の巡り方も変わってきてしまうので、牛の育ち方に大きな影響が出てきてしまうんですよ。だから、削蹄も僕らにとっては大切な仕事なんです。

無事に競りに出すまで愛情を込めて牛を育てていく

のびのびと牛が育つ黒島は有名ブランド牛の生まれ故郷

黒島の牛の良さはどんなところにあると思いますか?

黒島は土地が平らで広いから、牛飼いに敵しているといわれています。放牧地が広いので、他の地域と比べると牛にストレスがかからないのがいちばんいいんじゃないかな。例えば肉にしたときに、黒島産の牛はサシが入っていて良いってよくいわれるんですけど、それものびのび育っているからこそ。ストレスなく育った牛は肉質が良くなるんですよ。それから、黒島では子牛に人工乳じゃなくて親牛のおっぱいを飲ませて育てるのもいいのかもしれないですね。

黒島の牛、本当に自信があるのでもっと全国の人に知ってもらいたい。うちの牧場も今は繁殖だけやっていますが、いずれは肥育まで一環でやってみたいですね。黒島の牛は、競りにかけられた後は他の地域で育てられるので、それぞれの地域のブランド牛になっていくんですよね。だから、今は黒島牛というものがないんです。いつか、自分たちの手で育てて、黒島牛として出荷できるようになりたいですね。


観光客のかたもぜひ、黒島の牛を見に来てください。港からまっすぐの道を行けばすぐうちの放牧地がありますよ。2月には「黒島牛祭り」もやっています。運が良ければ、牛が1頭当たるかもしれませんよ!

平坦な黒島は見渡す限り豊かな放牧地が広がっている
牛の島として有名な黒島。港の目の前にも大きな牛のオブジェが!

宮良さんのレポまとめ

宮良さんが暮らす島の風景