古き良きものを守ることは未来へ繋がる 観光業と環境保全が両立できれば最高

竹富島の上勢頭篤さんにお話を伺いました。
竹富島の上勢頭篤さんにお話を伺いました。

一般財団法人竹富島地域自然資産財団理事長の上勢頭篤さんは、これまでに公民館長をはじめ、島の要職を歴任。現在も島の未来のために奮闘しています。

島の原風景を大切に残したからこそ、今の竹富島がある

竹富島が重要伝統的建造物群保存地区に選定されるまでの道のりを教えてください

1972年の本土復帰後、内地(日本本土)の企業がたくさん入ってきて島の土地を買い占めようとしていました。当時の竹富島は農業しかない貧しい島で、若者は働き口を求めて島を出て行かざるをえなかった。だからどうしても、現金ほしさに土地を手放す人がでてきてしまう。放っておけば島が島人のものでなくなってしまう。そんなことにならないように「島を守るために力を貸しなさい」と、島外にいた僕と兄貴は父に呼び戻されたんです。

僕らの生家は茅葺きの昔ながらの家なんだけど、久しぶりに島に戻ってみたら、この古い家が風通しもよくて涼しかった。よくできているんだなぁって感心したんだよね。こういう島の文化や伝統はしっかり残していきたい、だけどそれをするには今がギリギリの状態だとも思った。ここで頑張らないと島の大切なものが廃れてしまうんじゃないかって。それで、教育委員会と協力して島の家を1軒ずつ調査して、行政に補助をもらったりしながら昔の家を補修していきました。島の人には「どうして古い家なんか残すの。金をもらって台風に強いコンクリートの家にした方がいいんじゃないか」なんていわれたけど、そうじゃないよって伝えながらね。それで、昔ながらの集落の姿を残すことができて、1987年に重要伝統的建造物群保存地区に選定されることになりました。古いものを大切に残したからこそ、今この集落の姿を見に観光客が来てくれる。観光業によって、若い人も島で働けるようになった。結果としては良かったんじゃないかな。

  • 種子取祭が執り行われる聖地「世持御嶽」 種子取祭が執り行われる聖地「世持御嶽」

脈々と伝えられる「うつぐみの精神」こそが島を守るすべ

上勢頭さんが考える竹富島ってどんな島でしょうか?

竹富島は「うつぐみの島」。うつぐみとは、「みんなで協力してやっていく」という竹富島の精神のこと。幸いなことに竹富島には「種子取祭(たねどりさい)」という大切な行事が今も残っているので、年に1回はこの祭りを通じて、島外にいる島人もみんなで協力することで祭りを続けていくことができている。これも、うつぐみ。

僕自身のことでいうと、公民館長やったり財団の理事長やったりしながら自分の仕事もしているから大変ではある。でもこれは島のためだから仕方ないよね。島で生きていくってそういうこと。どんなことでも、みんなで動いてみんなでやる。島には集落が3つあって、その中にも色々な役職があるんだけど、みんなが島の仕事の経験を重ねていくことで、うつぐみの精神が育てられていく。みんなで考えてみんなで取り組んできたからこそ今の竹富島があるんだから、改めてこんな仕組みがちゃんとある竹富島って凄いなって思う。

  • 上勢頭さんの生家でもあるバギナ家。集落の中でも珍しい茅葺き屋根の古民家 上勢頭さんの生家でもあるバギナ家。集落の中でも珍しい茅葺き屋根の古民家

100年後の竹富島を守るための新たな取り組みもスタート

入島料徴収の取り組みについて教えてください

2019年の9月から竹富島へ来られる際に入島料(300円)を徴収する制度が始まりました。この制度については、僕が理事をやっている「竹富島地域自然資産財団」が中心となって、島民みんなで取り組んでいます。

これからの竹富島を考えたときに、自然環境の保全も集落の保存もすべてボランティアではやっていけない。それで、島に来る人に入島料を払ってもらえればと。集まったお金は、自然環境保全活動をはじめ、島を守っていくための資金にさせてもらいます。観光客のみなさん、ぜひご理解ご協力のほどよろしくお願いいたします。

  • 入島料を納めるには竹富島と石垣島のターミナル内の発券機でチケットを購入 入島料を納めるには竹富島と石垣島のターミナル内の発券機でチケットを購入

  • 竹富港ターミナルでチケットを提示すれば記念品がもらえる 竹富港ターミナルでチケットを提示すれば記念品がもらえる

竹富島を理解し愛してくれる観光客のみなさんに感謝!

竹富島を訪れる観光客に伝えたいことはありますか?

竹富島を長らく愛してくれている人がたくさんいらっしゃって、みなさん上手に島と向き合ってくれていることに感謝しています。だからこれから遊びに来る人にも、島をちゃんと感じてもらって竹富島を愛してほしいですね。

島に着いたらなにも難しいことを考えなくていい。ただ波打ち際を裸足で歩くだけで、自然に包まれてのんびりするだけで、島の良さを感じられて最高の気分になれると思いますよ。時間に余裕があればぜひ宿泊して、夕日や星空、朝の集落の風景なんかも見ていってほしいです。船の最終便が出たあとの、静かな竹富島の空気を感じてほしい。島の自然や風景は本当に美しいからね。いつまでも、この島の姿を残すためにって、観光客の人も協力してくれるとうれしいですね。そうやって、観光と島の保全が両立できれば最高なんじゃないかな。

  • 赤瓦の屋根が連なる風景が美しい竹富島の集落 赤瓦の屋根が連なる風景が美しい竹富島の集落

上勢頭さんのレポまとめ

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上勢頭さんが暮らす竹富島の風景

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新城島(パナリ島)

新城島(あらぐすくじま)は、上地島(かみじじま)と、下地島(しもじじま)の2つの島の総称です。離れた2つの島からなることから、八重山方言で「離れ」を意味するパナリまたはパナリ島とも呼ばれています。
島周辺は、神々しいほど綺麗な海です。かつての南西諸島におけるジュゴンの最大の生息地の一つであったとされます。

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由布島

由布島(ゆぶじま)は、西表島の東岸直近に隣接する小島です。島全体が亜熱帯植物園となっており、色とりどりの植物を一年中楽しむことができます。
西表島から由布島へのアクセスは水牛車にのって向かいます。1周ゆっくり歩いても1時間ほどで回れる手軽な観光地です。

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加屋真島

加屋真島(かやまじま)は、周囲2.5kmの小さな無人島です。約500羽の野生ウサギが生息していて、ウサギ好きにはたまらない離島です。天然記念物のオカヤドカリなど珍しい生物も生息しており、目の前に広がる石西礁湖には約400種類のサンゴと色とりどりのトロピカルフィッシュも生息しています。
石垣島や小浜島からツアーなどで気軽に行くことができ、心を和ませたり、絶景のビーチも楽しめるのが加屋真島の魅力です。