私たちの島時間レポ  西表島

大自然の中で受け継がれてきた
西表島の人々の暮らしに魅了された

西表島の長澤孝道さんにお話を伺いました。

西表島の自然ツアーガイドであり島廻遊代表の長澤孝道さんは、大分県出身。西表島の魅力にハマり、移住生活は22年にもなるそうです。

こんなにずっと島にいるなんて夢にも思わなかった

西表島に来たきっかけを教えてください

高校卒業後は1年ほど、オーストラリアとニュージーランドで暮らしていました。帰国して東京の専門学校へ進んだのですが、そこで西表島のシーカヤックガイドの求人を見つけたのが、島へ来ることになったきっかけです。

専門学校では環境系の勉強をしていたので、自然の中で仕事をしたいと思っていました。でも、最初は2~3年南の島で働けたらいいかなぐらいの軽い気持ちでしたから、こんなにずっといることになるなんて夢にも思っていなかった。この就職で来たのが初めての沖縄で初めての西表島でしたから、ハワイのような南国ビーチリゾートのイメージを抱いていたんですけど、来てみたらかなりのジャングルだったからびっくりしましたね。

僕が来た頃は自然ガイド自体も少なかった。アクティビティ会社も10件もなかったんじゃないかな。今はたくさんあって観光産業としても成り立っているけど、僕が来た頃はそういう感じじゃなかったな。自然を求めて島へ来て遊んでいるうちに、気づいたらガイドになっていたという人がほとんどでした。

海も山も。暮らしの中で自然を楽しんでいる

干立集落の昔ながらの暮らしにハマってしまった

20年以上も西表島に住むことになったのはどうしてですか?

気がついたら時間が経っていたという感じですよ。シーカヤックの仕事を3年弱やった後は、全然別の仕事について、西表島の自然を生活の中で楽しんでいました。

長く島で暮らせたのは今現在も住んでいる「干立(ほしたて)」という集落と出会えたのが大きいと思います。地元の人に教わった、昔から続く暮らしの様や知恵がおもしろくて、自分にしっくりマッチしちゃった。近所のおじぃが「海行くからついて来い」「イノシシ狩り行くから一緒に来い」って連れて行ってくれたりして。向こうからしたら僕は雑用なんだけど、それでもすごく楽しくてハマってしまった。

そんな生活をしているうちに、やっぱり好きな自然をみんなに伝えたいなと思うようになって、30歳になった頃にまた自然ガイドの仕事に戻りました。現在は島廻遊というアクティビティ会社を自分で営んでいて、観光客に西表島の自然を楽しんでもらうお手伝いをしています。

長澤さんを虜にした干立は静かで緑豊かな集落

干立は伝統や文化をしっかり守っている古い集落

長澤さんを魅了した干立とはどんな集落なのでしょうか?

干立は600年くらいの歴史がある、西表島の中でも最も古い集落のひとつです。だから昔から続いている風習や行事ごとがたくさんあります。山や川があって稲作に向いている場所だから、春から夏はお米を作っていてる。近くの海に行って魚やタコを捕ったり、山でイノシシや山菜を採ったりもしている。できる時にできることをして暮らしているところに魅力を感じました。

西表島の中でも特に伝統や文化をしっかり守っている集落なので、正直住む前は近寄り難い印象がありました。だけど、たまたま知り合いの人からこの集落に空き家があることを聞いて。それで、住むことになったんです。

集落の人口は100人くらいかな、ほとんどが高齢者ですね。毎月何かしら祭りや行事があって若い人も少ないから、最初は労働力として受け入れてくれてたのかもしれない。でも、それをどんどん重ねていったから、自分がどういう人か知ってもらえたんじゃないかな。子育てもここでしていますし、5年くらい前に土地も買わせてもらった。自分の家も持ったので、この集落にしっかり住んでいくつもりです。僕が先輩に教えてもらった集落の伝統や暮らしの知恵を、次の世代に伝えていきたいと思っています。

昔ながらの暮らしが息づく干立は美しい自然に抱かれていた

自然の中で暮らしていくことに比重をおきたい

これから先、西表島でやってみたいことはありますか?

観光業を主にやってきたんですけど、最近は原点に戻りたいなっていう気持ちがあります。せっかくこれだけ自然の恵みのあるところに住んでいるんだし好きなんだから、自然の中で暮らしていくことに比重をおきたいなと思っています。大自然のイメージが先行しているけれど、西表島ってもっと奥が深い島だと思うんです。昔から人が住んでいて、暮らすってことの原点がある。そういうところも伝えていけたらいいですね。

最近、西表島の名前が知られるようになって、レジャーを楽しみに来る観光客も前に比べると増えました。それはそれで良いことだけど、もう1歩踏み込んでみてほしいですね。奥が深い島だから、もっともっと先があるから、知れば知るほど西表島のディープな魅力に触れられると思いますよ。できれば、日帰りするんじゃなくてぜひ島に泊まってもらって。個人的には3泊ぐらいはしてほしいかな。そうやって、西表島の大自然を、本当の意味で愛してくれる人が増えるといいなと思っています。

島の自然風景になじむ長澤さん。これからもずっと西表島で暮らしていきたいと話してくれた

長澤さんのレポまとめ

長澤さんが暮らす島の風景